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『生まれ変わっても映画監督 市川崑』 藤井浩明page2 ―― 普段、原作権を取るのは、プロデューサーの役割なんですよね。 そうなんですけれどね、そういう点は、市川さんがやっぱり上手かったのは、それを会社に言って、会社から取りに行かせるということじゃなくて、そこで、自分が押さえちゃえばいいんだっていう。そういう監督はね、あまりいなかったですよ。今言ったみたいな戦法は誰もやっていないんですよ。市川崑がその原作を買ってきた、って言えば、当然、大映でやってくれってことになっちゃうでしょ。有無を言わさないわけですよ。どうしても、大映での発言力が強くなってくる。そうすると、自分が本当にやりたいやつを、次にまた挟み込んじゃうわけですよ。 ―― 谷崎さんのところへ行く時に、夏十さんが、ベンツに乗って行け、と言ったという話がありますね。夏十さんにも、戦術というか、プロデューサー的な資質があったのではないでしょうか。 そりゃあね、頭いいんですよ。そう、行くんだったら、当然ベンツだっていうんでね。成城ハイヤーにベンツが一台だけあったんですよ。そこに、「ベンツ、一日貸してくれ」って前もって注文つけておいてね。それで、淀長さんが、谷崎さんは六本木かどこかのお蕎麦が大好きだから、お蕎麦持っていってくれってことになったんですよ。僕は、ベンツの中でお蕎麦とおつゆ…。 ―― これはヒット作ですね。
ええ、大ヒットです。これで会社を儲けさせてくれたし、だからこの後にすぐ「野火」なんていう難しいもの、ようするに、普通はどこの映画会社もやらせないような企画を持ち込んでも、もう誰も文句を言わない、やってくれってことになる。で、これは、市川さんも、少々当たらなくても作品は絶対いいものになるっていう確信があるから持って行くわけですよね。 ―― 「黒い十人の女」は、当時の反応はいかがでしたか。
当時は、進み過ぎていて。お客さんが入らないってことはないんですけども、会社としては、もうちょっときてもいいと思ったのではないでしょうか。でもやっぱり、監督としての名前は築いているわけですよ、これで。 |
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