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『生まれ変わっても映画監督 市川崑』 藤井浩明page3 ―― 新東宝、東宝の頃は、会社の企画で苦戦したこともあるようですが、大映時代は、どうだったのでしょう。
自分でやりたくないってのはやっていない。オムニバス映画とかいうと、自分一人じゃなくて、他の監督も入れてやっているから、絶対これは当てなきゃいけない。そういうことが出来た人ですよね、市川監督っていうのは。 ―― 監督は、キャスティングは演出の70%だと言っていますが、この頃は、キャスティングはみな監督がやっているのですか? そう。僕がいっしょにやっていた時、会社がそのキャストじゃ駄目だと言ったことはほとんどない。俳優さんも俳優さんで、やっぱり売れている俳優さんだとか、のしあがっていきたいという俳優さんは、そういういい話ってのはどんなふうにしても出てきますよ。だから、やりやすかったんじゃないですか。 ―― 大映時代の作品、東宝作品、日活作品、それぞれ何となく肌合いのようなものが違うように感じるのですが、会社のカラーなんでしょうか? 俳優のタイプが違うでしょ。 ―― 各社、抱えている俳優さんのタイプが違う…。 東宝とも違うし、日活とも違うし。だから、やっぱり、市川さんは、キャスティングが上手いですよね。日活でやるときは、裕次郎なんかとしてて、じゃあ、大映でやるときに裕次郎を呼んできてやるっていうんじゃなくてね、大映は大映で雷蔵を使うわけでしょ。そういうところの使い方が上手いですね。 それで、自分の感覚に合うような人でないと、なかなかいい役はやらないですよ。例えば、こうだって言ったら、それがパッと解る俳優さん。そういう人で固めていっていますよ。「えっー、どうしてこっちなんですか」と、それはいっぱいいるわけですよ、感覚の違いから。 それと、やっぱり、市川雷蔵なんていうのは、なかなか逸材だったから、初めて組んでいてもね…。 ―― 「炎上」は、川口浩さんのつもりが、どんな理由か駄目になって、監督が直感で雷蔵さんにしたそうですね。なるたけ情報を仕入れて、監督なりの作戦を立てたそうですが…。
例えば、あれは、夜の京極を歩くところ。雷蔵が歩いていて、子犬の後を追っかけて行ったりして、路地裏へぱっと入ると、お寺の住職が祇園町の芸者と二人で車に乗るところで…、あのシーンですよね。市川さんが、後ろからカメラ、移動車で追っかけていく、雷蔵が歩いて行っているでしょ。その時、監督がね、「この人はどういう育ち方をした人なんだろうかなあ」と思ったって言う。あの後ろ姿は、すごい孤独感が出る、若くて、映画デビューしてまもないのに、あんな孤独感が出せるっていうのが凄いってね。 |
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