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Films

劇場公開作品をご紹介します。
若い人 1952年東宝
若い人 スチール写真

STAFF
製作:藤本真澄 原作:石坂洋次郎 脚本:内村直也、和田夏十、市川崑 撮影:山田一夫 照明:石井長四郎 美術:河東安英 録音:藤好昌生 音楽:芥川也寸志

CAST
池部良 久慈あさみ 島崎雪子 杉村春子 小沢栄 ジャンヌ・プッシュ 斎藤達雄 伊藤雄之助 三好栄子

ミッション系女学校の新任教師・間崎慎太郎は、高等部三年の惠子の作文に感動し惠子に興味を抱く。惠子は頭が良くエキセントリックで度々教師達を驚かせる生徒である。私生児で、飲屋の女将をする母・ハツにはたくさんの情夫がいた。間崎と親しい若い女性教師の橋本は特異な惠子の指導に消極的だが、間崎は修学旅行をきっかけに惠子への関心を深めていった。惠子が間崎の子を妊娠したと噂が立つ。噂を流したのは、橋本に嫉妬した惠子本人だった。橋本は、間崎の惠子への接し方を非難するが、自身も受け持ち生徒の堕胎事件に悩む。怪我をした惠子が間崎の下宿を訪ねて来た。間崎が家へ連れ帰ると、ハツは酒に酔い情夫の江口や惠子への執着と憎悪で酷い荒れようだった。江口の仲間の喧嘩で間崎は重傷を負い、惠子は間崎の看病をする。母が恐いと訴える惠子に、間崎はきっと泥沼から救い出すと誓い二人は抱擁する。惠子は学校でも堂々と間崎と親しくし、二人の関係は問題となった。間崎は信念と良心に恥じるところはない、と退職して惠子と結婚すると決意する。だが、惠子は、母が結婚を言い出す男に実はないと言ったと拒否し、その一方で、橋本に間崎を取られまいと異様な言動を重ねる。卒業式の日、間崎は思いあまって惠子を殴る。惠子は、厳しい愛で真っ当な人間に導いてくれと言ったのに自分はどんどん馬鹿みたいになっていく、と叫ぶ。間崎は、師弟の関係を超えた過ちを認め、二人で過失を乗り越えようと望むが、惠子は遠くへ行くと去る。間崎は惠子を追い、橋本は二人を見送り涙する。

以前からやってみたいと思っていた作品。"若い人"だけでなくハツやその愛人に興味を抱き描いた。

モノクロ スタンダード 114分

足にさわった女 1952年東宝
足にさわった女 スチール写真

STAFF
製作:藤本真澄 原作:沢田撫松 脚本:和田夏十、市川崑 撮影:安本淳 照明:石井長四郎 美術:河東安英 録音:宮崎正信 編集:坂東良治 音楽:黛敏郎

CAST
越路吹雪 池部良 山村聡 藤原釡足 見明凡太朗 伊藤雄之助 岡田茉莉子 沢村貞子 加東大介 三好栄子

大阪発東京行きの特急列車に、美人スリのさやと、休暇中のスリ係の刑事・北と、女スリの連載小説の依頼を受ける小説家・坂々は乗っていた。食堂車で、坂々が美人スリなどいないと息巻くのを聞き、北は猛反発、実物と会わせてやると豪語する。北が言う実物=さやは、スパイの嫌疑をかけられ死んだ父母の法事を立派にやって一家を陥れた親戚を見返そうと、故郷の下田へ向かっていた。仕事はしないつもりが、好餌を目の前に武器の足を使う。にわかに起きるスリ騒ぎ、犯人は足の綺麗な美人と聞いて北が追う。乗り換えた各駅が事故で止まり、さやと北は老婆を背負って線路を歩く。休暇中だから捕まえないと言いながら執拗に付きまとう北を振り払い、さやは漸く熱海へ着くが、なんと老婆に法事の金を掏られていた。自殺の名所で誰か来るのを待っていると、やって来た坂々はさやに魅せられ金を貸すことに。下田行きのフェリーで北は坂々と再会、だが、さやに拝まれ実物を紹介できぬうえ、坂々が法事で夫役をやると聞いて妬ましい。法事に集まった仇の親戚は、皆戦争の苦労で老いぼれていた。さやは啖呵も切れず、スリの自分に出来ることは何もないと泣く。スリをやめる決心をし、北に捕まえろと迫るが北は捕まえず、坂々はさやがスリだと知って驚くが美人スリこそ今自分に必要とさやを追う。東京警視庁で、捕まえろ、捕まえない、捕まえるなの騒動の末、さやは目出度く現行犯で北に捕まる。連行する大阪行きの列車で、北は、さやと結婚するにも刑事を辞める覚悟が云々と一人勝手に悩み、相客の新聞の坂々著「女掏摸」の記事に鼻を鳴らす。さやは、その客がいけすかなくて、思わず足を。

黛敏郎の案で全編にジャズを使った、アップテンポな人間喜劇。

モノクロ スタンダード 84分

あの手この手 1952年大映京都
あの手この手 スチール写真

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企画:辻久一 原作:京都伸夫 脚本:和田夏十、市川崑 撮影:武田千吉郎 照明:岡本健一 美術:西岡善信 録音:大谷巌 編集:宮田味津三 音楽:黛敏郎

CAST
久我美子 森雅之 水戸光子 堀雄二 伊藤雄之助 望月優子 津村悠子 平井岐代子 毛利菊枝 近衛敏明

大学の助教授で、小説を書くのが唯一の楽しみの鳥羽。女学校講師で、新聞の身の上相談や婦人運動でも活躍する夫人の近子。この中年夫婦の家に、家出娘のアコが転がり込んで来た。近子の姪のアコは、明るく活発、悪千恵が働くお転婆で、志摩での祖母と父との暮らしに鬱屈していた。アコは、鳥羽が近子に頭があがらず言いなりなのが気に入らず、夫婦の知人・天平も巻き込んで近子の鼻をあかす悪だくみをする。近子が怒ると、アコは、自分に家出を勧めたのは近子の人生相談だと言い、醤油を飲んでぶっ倒れ近子の心配を誘う。アコに好意的な鳥羽もさすがに恐れをなし、アコを志摩に連れて行くが、祖母と父は、アコが勝手に出した電報で、鳥羽家がアコを預かってくれるものと思いホッとしているのだった。結局、アコは鳥羽家に居ることになり、今度は心を入れ替え家事に張り切る。そんな折、近子は、鳥羽が雑誌に連載する小説のモデルが自分だと噂されているのを知り、人格に関わることを小説に書くとは卑怯だと鳥羽を責める。鳥羽は、その誤解より何より、今まで近子が自分の小説を読んでいなかったことがショックで、十年振りに近子を怒り、家出する。アコは帰って来るなとけしかけるが、鳥羽は早々に戻り、夫婦は語り合い、反省し合って互いを認め合う。沈潜していた夫婦の愛情を目覚めさせたのはアコだった。アコはこの顛末が悲しいが、中年男性の魅力が分かった気もし、勉強して近子以上の才女になろうとも思い志摩に帰るのだった。

東宝から大映京都に出向して監督した一作。家庭生活を見据え、センス豊かに描いたホーム・コメディ。

モノクロ スタンダード 92分

プーサン 1953年東宝
プーサン スチール写真

STAFF
製作:藤本真澄 金子正且 原作:横山泰三 脚本:和田夏十 脚本協力:永来重明、市川崑 撮影:中井朝一 照明:石井長四郎 美術:阿久根巌 録音:下永尚 編集:坂東良治 音楽:黛敏郎

CAST
伊藤雄之助 越路吹雪 藤原釜足 三好栄子 小林桂樹 小泉博 八千草薫 杉葉子 菅井一郎 加東大介 木村功 山本廉

要領のいい奴に都合良く使われる善良で不器用で気弱な野呂は、怪しげな予備校の数学教師である。8年前に妻を亡くした独り者で、下宿先の金森風吉とらんの娘・カン子に仄かな思いを寄せている。カン子は、銀行勤めをしており、活発で頑張り屋、やたらと負けず嫌いで非常に頑固である。ある日、野呂は、生徒に誘われ軽い気持ちで参加した労働大会で逮捕され教師の職を失ってしまう。戦後8年、学生は議論とケンカにあけくれ、代議士は選挙違反、警官は殺人に慣れっこで、医者は偽の診断書を書く等々、世の中はキナ臭く極度の職業難である。野呂は、職にありつけず生キャベツを食べて困窮を凌ぐ。カン子は、同僚の小田切と結婚するとらんに打ち明け、小田切が中卒である為に猛反対をくらう。らんは、中卒の風吉に舐めさせられた苦労を切々と訴え、カン子は大卒でも野呂のようなつまらない男もいるとやり合う。野呂は、カン子への思いも打ち砕かれいよいよ追いつめられる。が、家賃の滞納を恐れたらんが、機関銃の弾を作るミシン会社の話を持って来て面接を受ける。カン子は、一度決めたことを変更するような女ではないと自殺を決行するが、美人の自殺に群がる警官たちの陰謀で死にきれない。薄暗い未明の都会、野呂はやっとありついた職場への初出勤に急ぐ。

横山泰三の四コマ漫画「プーサン」に心酔した市川が、野心的に取り組んだ、戦後の日本の世相を描いた風刺喜劇の傑作。

モノクロ スタンダード 98分

青色革命 1953年東宝
青色革命 スチール写真

STAFF
製作:藤本真澄 原作:石川達三 脚本:猪俣勝人 撮影:玉井正夫 照明:石井長四郎 美術:村木忍 録音:下永尚 編集:坂東良治 音楽:黛敏郎

CAST
千田是也 沢村貞子 太刀川洋一 江原達怡 久慈あさみ 三國連太郎 伊藤雄之助 加東大介 小暮実千代 田代百合子

学問上の論争から大学教授の職を失った歴史学者の小泉。夫人の恒子と、大学を卒業し就活中の順平と高校生の篤志の二人の息子がある。家には出版社に努める福沢という下宿人もおり、姪で映画記者の美代子も度々訪ねて来る。ある日、小泉は、順平と篤志に一年分の小遣いの前渡しをせがまれる。息子たちは、その金を資本に高利貸しを始める。小泉と恒子は唖然とし息子たちを叱るが、説教はいつのまにか夫婦喧嘩になってうやむやになる。そんな時、小泉は、街で怪しい肩書きを持つ教え子・犬飼に会う。連れられて行った料亭の女将・お須磨に惚れ、最後の青春の火花を散らしたいと思いを募らせる。美男子で女言葉を話す福沢は美代子が好きで積極的にアプローチするが、利発でちゃっかり屋の美代子は、福沢をいいようにあしらっている。順平らは反抗的で享楽的な言動を繰り返し、小泉は、敗戦、戦後の混乱、再軍備の世の中に希望が見いだせずにいる若者の将来を憂慮し大学への復職を願う。同じ一つの時代で、右往左往するそれぞれの世代…。順平は恋人が出来て将来に前向きになった。恒子がこんな男女が夫婦になったらゾッとすると思っていた福沢と美代子は、新しいタイプの夫婦になった。小泉は、お須磨には騙されたが復職が叶い希望に満ちている。

福沢役には、市川がぜひ一緒に仕事がしたいと思っていた三國連太郎が起用された。

モノクロ スタンダード 107分

天晴れ一番手柄 青春銭形平次 1953年東宝
青春銭形平次 スチール写真

STAFF
製作:田中友幸 原案:野村胡堂 脚本:和田夏十、市川崑 撮影:遠藤精一 照明:横井総一 美術:北猛夫 録音:宮崎正信 編集:庵原周一 音楽:黛敏郎

CAST
大谷友右衛門 伊藤雄之助 杉葉子 伊豆肇 柳谷寛 木匠マユリ 見明凡太朗 石黒達也 山形勲 山本廉 三好栄子

平次は、ひと月前に十手を預かったばかりの新米岡っ引き。家業の飴屋と兼業の貧乏暮らしである。男前でケチで気弱な平次を、豆腐屋のお静は好いている。ある時平次は、下手人を捕まえる練習をしていて寛永通宝を投げる戦術をあみ出し、以来、その技に磨きを掛けていた。某日、子分の八五郎が、アルバイトで樽の運び屋をしていると、担いだ樽の中から男の死体が転がり出て、死体の袂から一枚の小判が落ちた。折しも、江戸市中は、横行する偽小判の噂で持ちきりであった。死体の小判が偽ものと分かり、平次は八五郎を引き連れ贋金造りの下手人捜しに乗り出す。事件は、勘定奉行を巻き込む一大事。下っ端の平次はそんなこととは知らずに大奮闘。南町奉行所総動員の大立ち回りの末、遂に真犯人を捕える。平次は、ご褒美に浴衣の反物を頂戴し、お静がそれを仕立ててくれた。二人は一緒に夏祭りに行くらしい。

マック・セネット流のドタバタ活劇をやりたい、と、自ら企画した時代劇。「面白いシナリオで楽しく失敗した」と市川は語る。

モノクロ スタンダード 94分

愛人 1953年東宝
愛人 須スチール写真

STAFF
製作:藤本真澄 原作:森本薫 脚本:和田夏十、井手俊郎 撮影:玉井正夫 照明:石井長四郎 美術:村木忍 録音:下永尚 編集:大井英史 音楽:黛敏郎

CAST
越路吹雪 岡田茉莉子 有馬稲子 菅井一郎 三國連太郎 尾棹一浩 伊藤雄之助 塩沢登代路 石田美津子 沢村貞子

高原で出会った二組の親子。映画監督の鉄風と息子の昌充、娘の麻納。そして、舞踏家の諏訪とその娘・美ヨ。昌充は美ヨに心惹かれていたが、鉄風と諏訪が再婚し、彼らは義兄妹になり鉄風の家に一緒に暮らす。鉄風の家には、助監督の須賀輪が下宿しており、麻納は須賀輪が好きで、結婚したいと思っている。東京近郊、多摩川にほど近い鉄風の瀟酒な洋館での夏の一日。その日、昌充は、須賀輪に、「美ヨと麻納のどちらに恋愛を感じるか」と聞き、麻納は、須賀輪と美ヨが親しく話すのに嫉妬して、美ヨに「須賀輪が好きなのね」と迫り、四人の若者の恋心の縺れが噴出する。美ヨは須賀輪への想いを心に秘めていた。そして、須賀輪は諏訪に惹かれていた。麻納に須賀輪への想いを打ち明けられた諏訪は、須賀輪の気持ちを確かめる。須賀輪は、思いあまって諏訪に告白する。諏訪は心を揺さぶられ、それを聞かされた鉄風も冷静ではいられない。そして、子供たちも。それぞれの心が、デリケートに濃密に絡み合い、行き違う。その日、須賀輪はこの家を去る。

セットを1パイだけにし、人間の動きをそこに追いつめてみた。洗練された演出が光るライト・コメディの傑作。

モノクロ スタンダード 87分

* 作品タイトル欄の社名等は、映画制作当時の製作者です。