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劇場公開作品をご紹介します。
STAFF ある小藩の勘定方・平松正四郎の家に、見知らぬ娘が訪ねて来た。娘は、自分の名前も何処から来たのかも分からず、覚えているのは正四郎の名前だけという。城代家老の娘との縁談が進んでいた正四郎は、誰かのいたずらか嫌がらせだと思いすぐにも娘を追い出そうとした。だが、記憶を喪い頼る者のない娘が不憫になり娘を家に置くことにした。平松家の家扶・吉塚とその妻・むらは、娘をふさと呼んで可愛がった。ふさは気立てが良く働き者だった。やがて、正四郎はふさをいとおしく感じるようになり、正四郎はふさと結婚した。二人は女の子を授かり幸せな日々を過ごした。だが、ふさは時折、何かに取り憑かれたような目つきになり、「ここが笹の道で、この先に木戸があって…」と記憶の一端を口走った。二人は、過去は思い出さなくてよいと思っていたが、思い出す日がきっと来るとも感じていた。ある日、ふさは、来た時と同じようにふいに姿を消した。そして17年が過ぎた、娘・ゆかの婚礼の日。正四郎は、まだ着替えもせずひとり庭に立っていた。平松家の女中だったお伸から手紙が届き、正四郎は懐かしく読む。お伸はふさに違いない女性を城下はずれの家で見たという。正四郎は夢中でふさを捜しに出る。だがそれはふさではなかった。家に戻った正四郎は、ほどほどに幸せであったと人生を思い起こし、慌てて婚礼の支度を整える。 カラー ハイビジョン(上映は35mmフィルム ビスタ)92分
STAFF 元禄14年3月14日。赤穂藩主浅野内匠頭は、御勅使御馳走の大役に臨んだ江戸城中で、高家吉良上野介に斬り掛かった。浅野は即日切腹、赤穂藩は廃絶となった。情けも武士への礼節もない処置処遇を下したのは御側用人柳沢吉保、その陰で術策を練るのは上杉家江戸家老色部又四郎であった。当代随一の利け者と云われた色部は、吉良、上杉の家名、柳沢の権勢を傷つけぬよう、詮索を禁じ刃傷の真因を闇に葬った。赤穂藩国家老の大石内蔵助は、速やかに赤穂特産の塩を売りさばき、流浪の民となった藩士の為の金の確保に努めていたが、敵のやり口を知って討入りを決意する。吉良を討ち家を潰し、上杉家の名を地に落とし、将軍家と柳沢の面目を叩き潰す、と。内蔵助は、一年九ヶ月を費やして心理戦、経済戦、諜報戦を仕組んだ。刃傷の真因が分からぬのを逆手に取り、賄賂を使って吉良の良からぬ噂を立て評判を貶めた。赤穂浪士が斬り込むとの風評は、吉良邸のある江戸城外郭の大名、旗本を怯えさせ、吉良は江戸城外へ屋敷替えをさせられた。城外となれば侵入は容易となり、色部はこれに城砦のごとき吉良邸を新築し対抗する。討入りは元禄15年12月14日に決行された。命は何ものにも代え難い尊きものと知る内蔵助、だが、侍の道を貫くその闘いは、敵の命を奪い、見方の命を使い捨てる闘いだった。脱盟者も多く赤穂浪士は総勢四十七名。吉良邸での激しい攻防戦の末、内蔵助は吉良の命を取る。その時、内蔵助が最後に愛した若きおかるは、新しい命、内蔵助の子を宿していた。 カラー ビスタ 129分
STAFF 昭和24年、神戸。寺田辰弥は自分を天涯孤独と思っていた。母・鶴子は七つの時に亡くなり、実父は知らず、養父は戦争で死んだ。その辰弥を鶴子の父・丑松が捜していた。捜索を請け負った諏訪弁護士の事務所で辰弥は初めて祖父と会った。だが、丑松はその場で毒殺された。辰弥の本姓は多治見といい、丑松は辰弥を岡山県八つ墓村の多治見家に連れ帰ろうとしていた。辰弥の元に八つ墓村に来れば26年前の大惨事が繰り返されると書かれた警告状が届くが、辰弥は八つ墓村へ向かった。多治見家は400年続く大庄屋。先代の要蔵が辰弥の父であった。現当主で辰弥の腹違いの兄・久弥は肺病を患い、齢八十六の一卵性双生児の大伯母、小竹と小梅が家を仕切っている。他四名の一族と近隣の娘の美也子、皆がそれぞれの思いで嫡流の辰弥を迎えた。諏訪弁護士の依頼でこの村にやって来た金田一耕助を出迎えたのは、第二の殺人の報である。被害者は久弥、死体の傍には八つ墓明神の護符が置かれていた。400年前、村人は、毛利元就に破れた尼子の落武者八人を騙し討ちにした。この殺戮を差配し毛利から多大な褒美を貰った多治見家初代当主は、凄惨な最後を遂げ、以来、多治見家当主は100年ごとに乱心した。八つ墓明神は尼子の祟りを恐れた村人がつくったものである。26年前、400年目の当主・要蔵は、頭に巻いた白鉢巻に灯した懐中電灯を鬼の角のように差込んで、猟銃と日本刀を振り回し村人を惨殺した。発端は、要蔵の鶴子への異常な執着だった。辰弥が村にやって来たのを機に起こる連続殺人、村人は尼子の祟りと恐れおののく…。 カラー ビスタ 127分
STAFF 元治元年6月、京都三条小橋の旅籠・池田屋で謀議する倒幕派の志士たちを、近藤勇率いる永倉新八、沖田総司、原田左之助、藤堂平助、谷三十郎ら新選組が襲撃した。その一年余前、幕府は、清河八郎の提言で将軍上洛の警護に浪士を募集した。天然理心流の道場を開く近藤と門人の土方歳三、沖田、永倉、山南敬助、原田もこれに応じ京に向かった。だが、清河の本意はこの二百数十名の一団を尊王攘夷の先鋒たる天皇の親兵とすることであった。清河の策略を知り幕府は彼等を江戸へ連れ戻すが、水戸脱藩者の芹沢鴨と近藤らは、京で幕府の為に働きたいと願い、京都守護職の承認を得て新選組の看板を掲げ市中警備に勤めた。隊には剣に覚えのある若者がぞくぞくと集まり、隊士統制の為に局中法度書が作られた。乱暴で傲慢な振る舞いをしていた芹沢が、法度書を笠に着て佐々木愛次郎と恋人のあぐりの命を奪い、近藤、土方、沖田らは芹沢を粛正した。新選組は近藤の単独政権となり、池田屋襲撃の働きで褒賞金を得、意気を上げる。色恋は様々で、近藤、土方は妾宅通い、山南は誠を誓う愛、松原忠司は自ら殺めた武士の妻と心中する。天才的剣客の沖田は恋に関心がなく、沖田はこの時既に結核を病んでいた。同年、勤皇派の伊東甲子太郎が新選組に加盟。近藤は、攘夷の他は主張が異なる伊東を、武骨な闘争集団にも学識者が必要と参謀にした。が、伊東は皇室の墓を守る御陵衛士隊を結成して分離、伊東に従う隊士も出た。徳川慶喜の大政奉還、坂本龍馬、中岡慎太郎の暗殺と時代は激動。伊東は薩長と結び新選組壊滅を企む。新選組は伊東を暗殺し御陵衛士隊との決闘に勝利するが、時代の潮流は変えられない。慶応4年、鳥羽伏見の戦いに敗北。二条城から大阪城へ移っていた慶喜は江戸へ脱出し、幕府軍、新選組の残党も従った。近藤は、甲陽鎮撫隊を結成し慶喜を甲府城に迎え徳川の天下を取り戻してみせると甲府へ向かうが、甲府城は陥落し、下総流山の最後の本陣で、近藤と土方は別れの握手を交わす。土方は会津へ向かい、近藤は官軍に投降し同年4月に斬首された。ほどなく沖田は肺結核で死亡、乱世を激しく生きた若者たちは鮮烈に散った。近藤は、斬首に臨み、面白い夢だったと追懐する。 カラー スタンダード 86分
STAFF ある小藩の江戸藩邸年寄役の次男・望月小平太は、上意により町奉行を仰せつかった。武芸に長じ、行状は放埒無頼で、あだ名をどら平太という。役目は壕外と呼ばれる一帯の手入れ。そこは、密貿易、博打、売春等が蔓延る悪徒の巣であり、その運上金は藩の貴重な財源となっていた。江戸を離れ国許にやって来たどら平太は、町奉行に着任するも、奉行所には一切出ず城下はずれの宿に身を隠す。城中との連絡係は清廉潔白な徒士目付・安川だが、一方で、大目付のエリート、仙波からも情報を得る。城下町から一本の橋でつながる壕外に、どら平太は身分を隠した着流し姿で潜り込む。その派手な遊びっぷりに、壕外を仕切る三人の親分・灘八、太十、才兵衛の子分たちは、どら平太を兄貴と慕って壕外の内情を明かす。着々と仕事を進めるどら平太だが、どら平太を追ってやって来た柳町芸者のこせいは、どら平太を江戸に連れ帰ろうと躍起である。そして、腕は一流、極めつけの堅物で不埒な御奉行が許せぬ柾木率いる剣士組、正体不明の黒覆面の武士たちがどら平太の命を狙う。太十と才兵衛が、どら平太の型破りな術中に落ちどら平太と兄弟の盃を交わす。これを知った第一の親分・灘八は、どら平太に呼出し状を送る。呼ばれて生きて帰った者はないという灘八の豪勢な屋敷。斬り掛かる五、六十人の子分どもをどら平太が峰打ちでなぎ倒す。しかし、この悪の根は城代家老をはじめとする城中の重職たちに通じている。そしてそこには、重職と親分の間を取り持つひとりの男がいる。 カラー ビスタ 111分
STAFF 若い男が、とある貧乏長屋に泥棒に入る。時は天保末期、江戸下層階級は貧困に喘いでいた。意を決して入ったものの、そこは盗る物など何も無い熊五郎のあばら屋。男はクサッてなけなしの金を叩いて居酒屋へ行く。と、四人連れの客が金を貯め込んでいるおかつの噂をしている。その夜、男はおかつの家に泥棒に入った。おかつは、亭主を亡くし、大工の市太、左官の次郎、魚河岸勤めの三之助、末っ子の七之助、娘盛りで働き者のおさんの四人の子と暮らしている。ひとり夜なべして賃仕事をしていたおかつは、泥棒に肝を冷やすも、男の膝が震えているのを見て、男に夕飯の残りのうどんを暖めてすすめた。おかつが何故泥棒をするかと聞くと、男は、親兄弟も仕事もなく食えないからと言う。金を出せと迫る男に、おかつは貯めた金の訳を話す。市太の友人の源さんは金に困り盗みをして牢に入っている。間もなく出てくる源さんを助けるために、生活も付き合いも切り詰め、一家は総出で三年がかりで金を貯めた。男が金を盗らずそのまま帰ろうとすると、おかつは男を引き止め、この家で一緒に暮らせと言う。男の名は勇吉といった。翌朝、おかつが親戚の勇吉の世話をしたいと相談すると子供達は快く承知した。源さんが牢を出、一家は源さんの新しい門出を皆で祝って泣く。勇吉は人の情けが心に滲み、この家で暮らしたいと思った。だが、大家に身元の証しを立てる書き付けが必要と言われ、勇吉はこっそり家を去る。追ってきたおさんに、本当のことを打ち明けると、おさんは、生まれた時から一緒のかあちゃんの言うことを信じるしかない、と言う。一家のきれいな心に支えられ、やがて勇吉はおかつの家族の一員となっていく。 カラー ビスタ 96分
STAFF 寺の長い廊下を、ひとりの男が来る。男はこの寺に参禅にやって来た。一室に入り、男は坐る。フイに和尚が現れて、お前は侍である、と言う。なるほど、男は侍姿になっている。和尚は、侍なら悟れぬわけがない、悟れぬところをみるとお前は侍ではない、人間の屑だ、と言う。男が怒ると、悟った証拠を持ってこい、と言った。和尚はフイに消え、部屋の大名時計が刻を打つ。男は、時計が次の刻を打つまでに悟って見せる、悟りと引き換えに和尚の首を取ってやる、と誓う。男は結跏趺坐を組む。悟れぬ時は、死ぬ。座布団の下には朱鞘の短刀が隠してある。悟ろうとするがなかなか悟れない。和尚が、障子に穴を開け、覗き見て笑う。視界がぼんやりしてきて奇妙な具合になるが、悟りとは違う。遂に、時計が鳴る。男は、切腹しようとするが出来ずに絶望する。和尚は、男の傍らに立ち、それでいいのだ、と言った。 カラー ビスタ 110分(合計)
STAFF 昭和22年、信州那須市。私立探偵・金田一耕助は、依頼人・若林の指定で、美しい湖とその湖畔に聳え立つ信州随一の財閥、犬神家の御殿を眺望する古びた旅館に宿をとる。七ヶ月前、犬神財閥の始祖・佐兵衛が巨額の富を遺し亡くなった。遺言状は、顧問弁護士の古館が預かっている。佐兵衛は生涯独身で通したが、腹違いの三人の娘、松子、竹子、梅子がおり、娘たちには、それぞれ、佐清、佐武、佐智の息子らがいた。遺言状は、一族全員と、佐兵衛の恩人・野々宮の孫・珠世が揃った席で開封されることになっていた。若林は、犬神家一族に血みどろの事件が巻き起こると恐れていた。が、金田一が到着するや毒殺された。若林は古館の助手で、遺言状には開封された形跡があった。佐清が復員し、いよいよ遺言状が開封される。金田一は古館の依頼を受けてその場に立ち会う。佐兵衛の遺影を掲げ、斧(よき)琴(こと)菊(きく)を象った黄金製の家宝が並ぶ床の間、その前に、佐清、佐武、佐智が座す。佐清は、戦争で負傷した顔面を仮面で覆い、その中のケロイド状にただれた肉塊が一同を脅かす。遺言状の内容は、佐清、佐武、佐智のいづれかと結婚することを条件に珠世に全財産を譲る、珠世、佐清、佐武、佐智の四人が死んだ場合は、佐兵衛が女工に産ませた子供・青沼静馬が全財産を相続する、という驚くべきものだった。佐武、佐智が相次いで殺され、商人宿に顔を隠した復員者が現れる…。佐兵衛の隠された真実、親と子の深い情、事件の背後に潜む深淵なドラマを見つめ、金田一が真相を解き明かす。 カラー ビスタ 134分 * 作品タイトル欄の社名等は、映画制作当時の製作者です。
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